「説明」と「叙述」の違い|「理由を分かりやすく解き明かす」と「現象をありのままに述べる」による使い分け

「説明」を、複雑な機械の内部構造を分解してロジックを解明している様子として、「叙述」を、窓の外の風景を筆とスケッチブックで忠実に描写し記録している様子として対比させたイラスト 言葉の違い

「この新しい機能がどのように機能するか、理論的な根拠を用いて詳しく説明した。」

「著者は戦争の悲劇を、感情を交えず、淡々とした筆致で克明に叙述した。」

あなたは、この二つの言葉が指し示す「何かを述べる」という行為の性質と、それぞれが関わる「理解への導入と論理的な解明」(説明)と「客観的な観察とその事実の情景描写」(叙述)の決定的な違いを、自信を持って説明できますか?

「説明(せつめい)」と「叙述(じょじゅつ)」。どちらも「情報を伝える」という意味合いを持つため、レポート、論文、文芸批評、および日常の会話の文脈で頻繁に混同されます。しかし、この二つの概念が示す意味は、まるで「『複雑な事柄を、理由や原因、過程などの「論理的関係」を用いて、読者や聴き手の「理解を促す」こと』(説明)」と「『人物や場面、出来事などを、あるがままの「事実や情景」として「描き述べる」こと』(叙述)」ほども異なります。この違いを曖昧にしたまま使用すると、「理由を欠いた単なる事実の羅列(叙述の範囲)」を、「相手の理解に資する解明(説明の範囲)」であるかのように誤認したり、その逆の認識のズレを生じさせたりする可能性があります。特に、学術論文、技術文書、および文学評論など、「文章が果たす「機能と目的(理解か描写か)」が厳しく区別される分野では、この微妙な使い分けが、あなたの文書の「論理的な厳密さと、情景の豊かさ」を決定づける鍵となります。

「説明(せつめい)」は、「説」(ときあかす)と「明」(あきらかにする)という漢字が示す通り、「複雑な事柄に対し、その「理由や原因、過程」などの論理を用いて、読者の「理解を助ける」こと。「論理的な解明」」という「理由や原因を「分かりやすく解き明かす」」に焦点を置きます。これは、論理、解釈、原因、過程、理解、知的な分析を伴う概念です。一方、「叙述(じょじゅつ)」は、「叙」(のべる、ついでをたどる)と「述」(のべる)という漢字が示す通り、「特定の「現象、情景、事実」に対し、その順序や状態を「ありのままに並べ述べる」こと。「客観的な描写」」という「現象や出来事を「ありのままに述べる」」に焦点を置きます。これは、事実、描写、順序、客観的、情景、観察と記録を伴う概念です。

この記事では、論理学と文章表現の専門家の知見から、「説明」と「叙述」の決定的な違いを徹底的に解説します。単なる言葉の違いに留まらず、それぞれの表現行動が持つ「機能(論理的解明か、事態の描写か)の違い」と、学術文書と文芸作品における使い分けに焦点を当てて深く掘り下げます。この記事を最後まで読めば、あなたはもう「説明」と「叙述」という言葉を曖昧に使うことはなく、より精緻で、目的に合った文書構成と、効果的な情報伝達を構築できるようになるでしょう。


結論:「説明」は論理による理解の提供、「叙述」は客観的な事態の描写

結論から述べましょう。「説明」と「叙述」の最も重要な違いは、「文章が果たす「機能と目的」」という視点にあります。

  • 説明(Setsumei / Explanation):
    • 機能: 「なぜそうなるのか」、「どうするのか」といった、理由や過程の「論理的な解明」。
    • 目的: 相手の「知的な理解」を促し、不明瞭な点を明らかにする。
    • 焦点: 原因と結果の関係、定義、効率的な手順。

      (例)新しい政策が経済に与える影響を、経済学の理論に基づいて説明する。(←理由とロジックを解き明かす)

  • 叙述(Jojutsu / Narration/Description):
    • 機能: 「何が起こったか」、「そこに何があるか」といった、事態や情景の「客観的な記述と描写」。
    • 目的: ありのままの「事実を伝える」、あるいは「情景を描写して追体験させる」。
    • 焦点: 時間の順序、位置関係、五感に訴える表現。

      (例)事故現場で目撃した事実を、時系列に沿って詳しく叙述した。(←ありのままの事態を述べる)

つまり、「説明」は「The function of clarifying a concept or process by revealing the logical relationships such as cause, reason, and procedure (Logical Clarification).(論理や理由を用いて、読者の「理解を促す」行為)」という理由や原因を「分かりやすく解き明かす」に焦点を置くのに対し、「叙述」は「The function of describing an event or scene objectively as it happened, emphasizing the temporal order and sensory details (Objective Description).(客観的な事実や順序に基づき、「ありのままに述べる」行為)」という現象や出来事を「ありのままに述べる」に焦点を置く言葉なのです。


1. 「説明(せつめい)」を深く理解する:理由や原因を「分かりやすく解き明かす」

複数の論理的なステップを示すジグソーパズルのピースが、因果関係を示す矢印で結びつけられ、最終的に完全な理解の形(大きな光る球体)を形成している様子

「説明」の「説」は「ときあかす」、「明」は「あきらかにする」という意味を持ちます。この言葉の核心は、「読者や聴き手が「なぜそうなるのか」という論理的な疑問を持った事柄に対し、原因、理由、作用機序などの「論理的な根拠」を付け加えて、その仕組みや意味を「明らかにする」こと。「論理的な解明」」という、理由や原因を「分かりやすく解き明かす」にあります。

説明は、主に学術論文、技術マニュアル、法的な解釈、教育など、「対象の「理解」を深めることが最大の目的である分野」が焦点となる分野で使われます。それは、「単なる事実の羅列に終わらず、その事実の背後にある『なぜ』や『どのように』を解き明かす」という論理と解釈に焦点を当て、その説得力(論理の破綻のなさ)が評価の焦点となります。説明は、単に事実を述べるだけではなく、「事実間の関係性を示して、理解を導く」ことが最大の目的です。

「認識」と「理解」の違いを押さえると、説明がどの段階で相手の納得に到達させる行為なのかも整理しやすくなります。

「説明」が使われる具体的な場面と例文

「説明」は、論理、解釈、原因、過程、理解、知的の理由や原因を「分かりやすく解き明かす」が関わる場面に接続されます。

1. 概念や理論、事柄の作用機序や原因を解き明かし、理解を促す場合
「何が原因でどのような過程を経るのか」という論理を伝える際に使われます。

  • 例:教師は、生徒に太陽系の成り立ちの理由を図を用いて詳しく説明した。(←成り立ちの原因と理論を解き明かす)
  • 例:彼は、株価が急落した経済的な背景と原因を理論的に説明した。(←現象の論理的な根拠を明らかにする)

2. 手順や方法など、実行すべきプロセスを詳細に伝える場合
「その手順で行う必要性」を含めた解明を求める際にも使われます。

  • 例:新しい機器の使用方法を、一歩ずつ丁寧に説明書に記載した。(←動作の過程と仕組みを解明する)

「説明」は、「理由や原因を『分かりやすく解き明かす』こと。論理的な解明」という、理由や原因を「分かりやすく解き明かす」を意味するのです。


2. 「叙述(じょじゅつ)」を深く理解する:現象や出来事を「ありのままに述べる」

時系列に沿った一連の客観的な出来事(例:太陽が昇り、人が歩き、雨が降る)が、感情を排した無地のキャンバスに淡々と記録されている様子

「叙述」の「叙」は「のべる、ついでをたどる」、「述」は「のべる」という意味を持ちます。この言葉の核心は、「人物、出来事、場面といった「現実に観察された事実」に対し、「その時間の順序や空間的な配置」を追いながら、あるがままの情景を「描写して述べる」こと。「客観的な描写」」という、現象や出来事を「ありのままに述べる」に焦点を置きます。

叙述は、主に文学(小説や詩)、歴史記録、報道記事、および目撃者の証言など、「事実や情景を「ありのままに」伝えることが目的の分野」が焦点となる分野で使われます。それは、「出来事の連続性、情景のディテール、あるいは人物の行動を、解釈や意見を加えず、淡々と、あるいは情感豊かに描写する」という事実と描写に焦点を当て、その客観性(個人の解釈のなさ)や描写の豊かさが評価の焦点となります。叙述は、読者に「自らの解釈や感想を抱かせるための素材」を提供することが最大の目的です。

なお、客観性という観点をさらに整理したい場合は、「客観的」と「主観的」の違いも併せて確認すると、叙述の立ち位置がつかみやすくなります。

「叙述」が使われる具体的な場面と例文

「叙述」は、事実、描写、順序、客観的、情景、記録の現象や出来事を「ありのままに述べる」が関わる場面に接続されます。

1. 物語、歴史、事件など、時系列に沿った出来事の流れや情景を描写する場合
「その場で何が起こったか、どうなっているか」という事態を客観的に述べる際に使われます。

  • 例:警察は、事故発生時の車の位置や速度を、目撃者の証言に基づき忠実に叙述した。(←客観的な事実の記録)
  • 例:小説の冒頭では、寂れた港町の風景が詳しく叙述されていた。(←情景の描写)

2. 感情や解釈を排し、事実を淡々と羅列する場合(特に歴史的・科学的な記録)
「あるがままの事実を伝える」という意味合いを込める際にも使われます。

  • 例:戦争記録では、兵士たちの日常が淡々と叙述されていた。(←解釈を排した記録)

「叙述」は、「ありのままに並べ述べること。客観的な描写」という、現象や出来事を「ありのままに述べる」を意味するのです。


【徹底比較】「説明」と「叙述」の違いが一目でわかる比較表

「説明」と「叙述」の違いを「機能(Function)」や「目的(Objective)」などで比較したインフォグラフィック

ここまでの内容を、両者の文章機能と目的の違いを明確にする比較表にまとめました。この表は、あなたが適切な表現を選ぶための判断基準となるでしょう。

項目 説明(せつめい / Explanation) 叙述(じょじゅつ / Narration/Description)
文章の主要機能 理由、原因、過程の「論理的な解明」。 事実、情景、出来事の「客観的な記述」。
主な目的 読者の「理解」を促し、曖昧さを排除する。 「事実や情景」をありのままに伝える。
含まれる要素 定義、因果関係、分析、手順。 時間軸、場所、五感に訴える情景。
主な使用分野 論文、マニュアル、教科書、法的文書。 小説、歴史書、報道記事(事実報告)。
英語での類義語 Explanation, Clarification, Analysis Description, Narration, Account

3. 学術と文芸における使い分け:論理の連鎖か、事態の再現か

学術的な文書や文芸作品といった表現形式において、「説明」と「叙述」を意識的に使い分けることは、「理論の正しさや過程の妥当性を、原因と結果の連鎖で客観的に論証する(説明の論証性)」という知的な側面と、「読者に対して、出来事が発生した情景をあるがままに示し、追体験させる(叙述の再現性)」という感覚的な側面をコントロールするために不可欠です。

情景の再現との境界をより細かく見たいときは、「描写」と「叙述」の違いも判断材料になります。

◆ なぜそうなるのか、どのように機能するのかを論理的に解き明かす場合(「説明」)

「「物事の定義、その背景にある原因、そしてそれが導く結果」の関係性」を明らかにして「知的な理解」を助ける際には「説明」を使います。これは、科学論文や実用文書に適しています。

  • OK例:報告書は、問題発生の根本原因と再発防止のための措置を詳しく説明している。(←原因と措置の論理的な関係を解明)
  • NG例:彼は、朝起きてから出社するまでの行動のすべてを細かく説明した。(←単なる行動の記録・事実の羅列は「叙述」が適切)

◆ 何が起こったか、どのように見えたかを客観的にありのままに述べる場合(「叙述」)

「「発生した出来事の順序、その場所の情景、人物の行動」という事実」を「解釈を加えずに淡々と描写する」際には「叙述」を使います。これは、小説や事実報告書に適しています。

  • OK例:小説家は、主人公が出会った人々の容姿と行動を克明に叙述した。(←人物の客観的な描写)
  • NG例:学術論文の一部で、実験結果の導出された理由を細かく叙述した。(←結果の理由を解明するのは「説明」が適切)

◆ 結論:説明は「Logical Clarification」、叙述は「Objective Description」

説明は、「論理的な解明(Logical Clarification)」が焦点です。読者の理解を促すために、原因や過程という論理を解き明かすことが目的です。一方、叙述は、「客観的な描写(Objective Description)」が焦点です。ありのままの事実や情景を伝えることで、読者にその場面を再現させるのが目的です。つまり、その文章が「理由やロジックを解き明かしているか」「事実の情景を淡々と述べているか」によって使い分けるのが正しい道筋です。


4. まとめ:「説明」と「叙述」で、情報伝達の「目的」と「機能」を明確にする

「説明」を、建物の設計図と計算尺を使って構造を分析している建築家として、「叙述」を、完成した建物の外観と、その前に佇む人物の様子を写真で記録している写真家として表現したイラスト

「説明」と「叙述」の使い分けは、あなたが「理由や原因を「分かりやすく解き明かす」」という理解への導入を指しているのか、それとも「現象や出来事を「ありのままに述べる」」という客観的な記録を指しているのかという、情報伝達の「目的(理解か再現か)」と「機能(解明か描写か)」を正確に言語化するための、高度なスキルです。

  • 説明:機能は論理的解明。目的は読者の理解の深化。
  • 叙述:機能は客観的描写。目的は事実のありのままの伝達と情景の再現。

この違いを意識して言葉を選ぶことで、あなたの論文、報告書、および文芸作品における文章表現は、その機能が知的な分析か、感覚的な描写かを明確に区別し、最高の論理的整合性と表現の豊かさを確保します。この知識を活かし、あなたの表現力の質を飛躍的に高めてください。

参考リンク

  • 日本語学習者の文章における叙述表現の一分析
    → 日本語を母語としない学習者の作文における「叙述表現(じょじゅつ)」の使われ方を分析した研究で、「叙述」がどのように捉えられ、また学習者が苦労しやすい点の具体例を通じて、「叙述」の語用や構造がより明示されます。
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